DOI: 10.1002/jja2.12857 ISSN: 1883-3772

気胸,膿胸を合併し胸腔鏡手術が有効であったLemierre症候群の1例(Pneumothorax and empyema secondary to Lemierre’s syndrome treated by thoracoscopic surgery)

下茂 由希子, 瀧口 徹, 金 史英, 阪本 太吾, 佐藤 陽介, 松本 佳之, 横堀 將司

要旨

症例は既往のない29歳の男性。咽頭痛を主訴に近医を受診し,扁桃炎の診断であった。1週間後に著明なSpO2の低下を認め,集中治療目的に当科を紹介受診した。造影CTで口腔内膿瘍,左内頸静脈に血栓性静脈炎,両肺野に多数の結節影,両側の大量胸水を認めた。口腔内膿瘍の穿刺液,血液,胸水の培養からはいずれもFusobacterium necrophorumが同定された。先行する口腔咽頭感染,血栓性静脈炎,遠隔感染巣,血液培養陽性からLemierre症候群と診断した。人工呼吸器管理開始直後,両側気胸となり,酸素化の安定に時間を要した。また,その後膿胸の管理に難渋し,両側に計5本のドレーンを挿入して胸腔内の洗浄を繰り返した。左側の気胸と膿胸の改善に乏しく,第15病日に胸腔鏡補助下に洗浄ドレナージ術とドレーン位置の調整を行った。第50病日にすべてのドレーンを抜去でき,第56病日にリハビリテーション病院へ転院となった。気胸,膿胸の再発はなく社会復帰した。Lemierre症候群は,口腔,咽頭領域の先行感染を契機に発症し,炎症が波及して内頸静脈の血栓性静脈炎や遠隔臓器への敗血症性塞栓症を引き起こす重篤な全身感染症である。高頻度に敗血症性肺塞栓症を合併するため,陽圧換気による気胸発症に注意が必要である。また,合併する気胸や膿胸は難治性であることが多く,本症例では胸腔鏡を用いたドレナージが有効であった。

下茂由希子と滝口徹は筆頭著者として同等の貢献をした。

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