DOI: 10.1002/jja2.12964 ISSN: 1883-3772
Stroke mimicを呈した低カリウム血症性ミオパチーの1例(Hypokalemic myopathy which mimicked a stroke: A case report)
石川 成人, 髙橋 慶多, 竹内 広幸要旨
急性期脳梗塞は画像診断と治療の進歩により迅速な診断と治療が可能となっているが,脳卒中症状を呈する症例の中には,脳血管障害以外の疾患が原因となっている場合がある。今回,stroke mimicを呈した低カリウム血症性ミオパチーの症例を経験したので報告する。症例は75歳の男性,左上下肢を有意とした筋力低下により体動困難となったため救急搬送された。搬送時,脳卒中が疑われたがmagnetic resonance imaging(MRI)では脳梗塞像は認めず,著明な低カリウム血症(血中カリウム濃度1.6mEq/L)とcreatine kinase(CK)の上昇(CK 328U/L)を認め,低カリウム血症性のミオパチーによる筋力低下が疑われた。入院後,右上下肢の筋力低下も増悪し,嚥下障害を来して誤嚥・窒息により気管挿管,人工呼吸器管理を要した。その後,カリウム補正とともに速やかに筋力低下は改善した。ホルモン検査を含めた各種検査に異常はなく,低カリウム血症性ミオパチーと診断した。通常,低カリウム血症性ミオパチーは左右対称性に発症するが,稀に本症例のような非対称の症状を来す場合や,時間差をおいて症状が出現することがある。Stroke mimicを呈する場合は低カリウム血症を含めた電解質異常も鑑別が必要であり,治療開始後も臨床症状の経時的変化に注意することが重要である。