DOI: 10.1002/jja2.12980 ISSN: 1883-3772
FilmArray® 髄膜炎・脳炎パネルが起因菌同定に有用であった細菌性髄膜炎の2例(Two cases of bacterial meningitis in which the FilmArray® Meningitis and Encephalitis Panel was useful in identifying the causative organisms)
山下 純平, 福島 雅郁, 小林 謙一郎, 久保 真佑要旨
2022年10月からFilmArray® 髄膜炎・脳炎パネル(ビオメリュー社,米国。以下,FA–M/E)が保険適用となった。今回,FA–M/Eが起因菌同定に有用であった細菌性髄膜炎の2例を経験したため報告する。症例1:73歳の男性。熱源不明の発熱のため入院となり,入院当日夜に痙攣重積と意識障害が出現した。髄液検査では細胞数増多を認めなかったものの髄液糖の著明な低下があり,FA–M/EでStreptococcus pneumoniaeが同定されたことで細菌性髄膜炎の診断に至った。症例2:73歳の男性。発熱・意識障害で救急搬送され,髄液検査で細胞数増多と髄液糖の低下を認め,細菌性髄膜炎の診断で入院となった。髄液のグラム染色・培養検査では細菌を認めなかったが,FA–M/EでStreptococcus agalactiaeが同定され,細菌性髄膜炎の診断に至った。細菌性髄膜炎では治療の遅れが,生命予後・神経学的予後の悪化につながる。髄液のGram染色・培養が陰性である細菌性髄膜炎や細胞数増多・髄液糖低下を伴わない細菌性髄膜炎が報告されており,治療の遅れが生じうる。今回の2症例ではFA–M/Eを活用することで迅速な起因菌同定につながった。従来の髄液検査のみでは診断・起因菌同定できない場合でも,FA–M/Eで同定できる症例があり,FA–M/Eは細菌性髄膜炎の診療に有用と考えられる。