DOI: 10.1002/jja2.13175 ISSN: 1883-3772

心電図およびpoint–of–care ultrasoundで診断が困難であった右室梗塞による重度ショックの1例(Right ventricular infarction presenting with severe shock and nondiagnostic electrocardiographic and point–of–care ultrasound findings: A case report)

加藤 千紘, 神宮司 成弘, 簗瀬 正伸, 井澤 英夫, 岩田 充永

要旨

【背景】 右室梗塞は急性冠症候群に伴うショックの重要な原因であるが,初療の心電図およびpoint–of–care ultrasound(POCUS)所見が非典型で診断に難渋することがある。今回,救急医による初療の非侵襲的評価では診断が困難であった1例を報告する。 【症例】 87歳の男性。呼吸困難と意識障害で救急搬送された。徐脈性心房細動,低血圧,著明な乳酸アシドーシスを認めた。12誘導心電図では右脚ブロック,III誘導の軽度ST上昇,I・aVL誘導でST低下を認めたが,典型的下壁梗塞所見を欠き,右側胸部誘導でST変化はなかった。Point–of–care ultrasoundでも左室収縮は保たれ,右室拡大や明らかな壁運動異常を認めなかった。下大静脈拡張から閉塞性ショックも鑑別に挙がった。造影CTではショックの原因を特定できず,少量輸液で循環動態は一時的に改善した。その後,トロポニンI上昇と心電図変化から急性冠症候群を疑って緊急冠動脈造影を行い,右冠動脈近位部高度狭窄に経皮的冠動脈形成術を行った。翌日の心エコーで右室の拡大と壁運動異常を認め右室梗塞と診断した。 【結語】 右室梗塞はショックの原因となりうるが,救急医による初療の心電図およびPOCUSでは診断が困難な場合がある。原因不明の低灌流状態では,右室梗塞を鑑別から除外せず,冠動脈造影と再灌流療法を遅らせないことが重要である。