DOI: 10.1002/jja2.13186 ISSN: 1883-3772
尿閉解除前に下大静脈フィルターを留置した膀胱拡張に伴う静脈血栓塞栓症の1例(Venous thromboembolism caused by bladder distension managed with inferior vena cava filter placement before relief of urinary retention: A case report)
長嶋 一樹, 羽切 慎太郎, 野崎 万希子, 澤井 啓介, 赤坂 理要旨
【背景】 尿閉を原因とする静脈血栓塞栓症は稀ではあるが起こりうる。膀胱拡張に起因した深部静脈血栓症では尿閉解除が肺血栓塞栓症を引き起こす可能性があるため,膀胱ドレナージの際は注意を要する。 【症例】 神経因性膀胱を既往にもつ86歳の男性で,突然の呼吸困難感を主訴に救急搬送された。来院時リザーバー付きマスク15L/分の酸素投与下でSpO 2 93%であり,身体所見上呼吸音は清で,腹部膨隆と両下腿浮腫を認めた。超音波検査で心臓は右室拡大と左室圧排像を認め,腹部では著明な膀胱拡張を認めた。造影CT検査で両側肺動脈内血栓と右外腸骨静脈以遠に血栓充満像を認め,また著明に拡張した膀胱による下大静脈および両側総腸骨静脈の圧排像を認めた。尿閉解除による肺動脈再塞栓を懸念し,下大静脈フィルターを留置した後に膀胱ドレナージを行ったところ4,900mLの排尿を認めた。その後抗凝固療法を継続し,肺動脈内血栓の縮小と深部静脈血栓の消失を確認した。 【結語】 尿閉による深部静脈血栓症では膀胱ドレナージが肺血栓塞栓症を誘発する可能性がある。下肢浮腫を伴う尿閉症例においては深部静脈血栓症の合併に留意した診療を行う必要がある。