DOI: 10.1002/jja2.12917 ISSN: 1883-3772
偶発的に発見した小児複数磁石誤飲の1例(A case of incidental X–ray finding of ingestion of multiple magnets in a child)
城間 恵介, 杉村 朋子, 平良 隆行, 西原 史真, 江波戸 大悟, 宮川 幸子, 梅村 武寛要旨
小児の異物誤飲は日常よく経験する。多くは自然排出が期待でき,手術などの侵襲的処置を要する症例は多くない。しかし複数の磁石誤飲は消化管穿孔や腸閉塞の危険性が高く,緊急処置を要した報告が多い。今回,交通事故を契機に,複数のネオジム磁石誤飲を偶発的に発見し,消化管穿通・瘻孔形成を認めた小児の症例を経験したため報告する。症例は2歳の女児。交通事故で救急搬送され,外傷はなかったが,画像検査で小腸内に複数の異物を認め,磁性玩具が疑われた。無症状のため経過観察での自然排出を期待したが,5日間経過しても移動を認めず,腹腔鏡下異物除去術を施行した。複数の磁石により接着された小腸は,接着部で穿通し消化管穿通・瘻孔形成を来していた。術後経過は良好で,術後6日で退院した。海外のアルゴリズムでは,単純X線検査を繰り返すことによる経過観察を行うと記載があるが,経過観察から手術へ方針転換する時期についての明確な推奨はない。本症例では無症状であったことが経過観察期間を延ばした要因であり,異物除去術への方針変更を行う時期を逃さないことが重要である。ネオジム磁石複数誤飲の場合,異物の移動がない場合は,無症状でも最長72時間以内に手術を決断すべきと考える。